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南トルコ・アンタルヤの12ヶ月*** 地中海は今日も青し

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 (14)その後―上の娘


《9月―頭の痛い季節》 ~2003年9月の記録

 ∬第14話 その後―上の娘の場合

それから3週間が経った。

コンセルヴァトゥワルの新しいピアノ教師とは、日本から着いたばかりの夫も一緒に会って話し、毎週土曜日午後2時から1時間のレッスンを受けることに決めた。
まだ大学を卒業したてといった風の、若い女性だ。
レッスン料は1時間30ミリオンで、レッスン毎にその場で手渡すというスタイル。

初めてのレッスン。
どんな指導になるのか、やはり気掛かりだったが、教室に一緒に入った私と下の娘は邪魔になるからと早速追い出されてしまい、結局分からずじまい。
しかし、3ヶ月のブランクで弾ける曲をほとんど失った娘も、すぐに調子を取り戻し、次々と宿題に出される新しい曲たちには、自ら積極的に取り組んでいるようだから、まずは順調な滑り出しといえるかもしれない。

納得いかないのは、45分で切り上げられてしまうこと。まだ歳も小さくて疲れてしまうし、宿題の数が増えてしまうというのだが、一つ一つの曲にもう少しゆっくり時間を掛けて指導すればいいのでは、と思っても、なかなか口に出せず。
2回目のレッスンとなった先週の土曜、恥を忍んで、割に合わないレッスン料のことを切り出してみた。

「1時間ということで30ミリオンを承諾したのです。毎回45分で終わるのなら、30ミリオンお支払いするのは気が進みません」
すると、教師の方も大したもので、「もう少し成長したら、1時間が10分15分延びることだってありますから」それで帳消しになるんではないか、というのだ。
こう言われると、さすがにそれ以上何も言えなくなり、黙ってバッグから30ミリオンを取り出し、教師に渡したのだった。

しかし、1時間がそれ以上延びることは決してないだろうと分かっていた。
なぜなら、前のレッスンが終わってから駆けつけても間に合わないらしく、最初の2回とも2時からのレッスンの開始が5分10分遅れたからだ。
それに、この後続いて3時からも、同じ建物内での別のレッスンを抱えているような話を以前に聞いていた。

結局、この話題は、11月に夫が再び帰ってくるのを待って、夫の同伴の上でするしかなさそうだが、彼女もトルコ人、いったん成立した商談を簡単に手放すようには思えない。今は少々諦めの心境である。
口の達者なトルコ人を言い負かすだけのトルコ語能力もさることながら、一度言い返された後にこれではどうだと切り返せる機転と度胸は本来持ち合わせていないことを、いつもながらつくづく思い知らされるのだった。

音楽教室巡りを一緒にしてきた友人とは、電話で様子を尋ねあうものの、すれ違いが続いていた。
いまだYちゃんのピアノ教師が見つかっていない友人には、娘の新しい教師が良さそうなら紹介することになっていたが、初回2回の率直な感想を漏らすと、「夫が同じコンセルヴァトゥワルの男性教師と今度会って話をすることになったの。良ければあなたも教えてもらいなさいよ」と勧めてくれた。
新しく始めたばかりで次々教師を鞍替えするのは、良い考えとは思えないが、少しでも感じの良い人物から、納得のいくレッスン料で、適切な指導が受けられるようになるまで、私は妥協するつもりはないし、これからも探し訪ねて行くことになるだろう。

人はこんな私のことを、教育ママと呼ぶのだろうか。

 つづく

∬第15話 その後―下の娘の場合




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